手縫いをすること

D.A.61 leather works の製品は、一部例外はありますが、ほぼ手縫いでつくられています。受注制作ですので注文の入り方によっては同じ製品をいくつもつくり続けることになります。地道な繰り返しの作業に飽きたり、つらかったりするのでは、と思われるかもしれませんが、そういう感覚になったことはありません。

とはいえ、実は私も同じ作業をし続けるというのは大の苦手です。つじつまが合わないことを言っているようですが、そうではないんです。そもそも私には同じ製品を繰り返しつくっているという感覚は無く、毎回新たな気持ちで制作に臨んでいます。だから飽きるという感覚にはならないのです。

手縫いは、ミシン縫いに比べてとても時間がかかりますが、それはそのまま、製品と向き合う時間にもなります。無心で針を進める中、様々な改善点などのアイディアが生まれ、おのずと次回の制作に反映されます。今回制作したものは、過去から脈々と受け継がれた結果として完成します。そして次回は、また少し何かを試みた、今回とは僅かに違うものが出来上がります。これが繰り返され、製品がゆっくりと少しずつ育ってゆきます。(もちろん、これらは全て製品としてのクオリティー、仕様などを担保した上でのお話です。)

非効率だと思われる手縫いで行う制作も、こういった視点でとらえると、非常に有機的な営みだと感じられるのではないでしょうか。私が思う手縫いの最大の魅力はここにあります。同じ形の製品をいくつつくったとしても、ひとつとして同じものはできません。過去から積み重なったその上に、新たなものが出来上がります。

こんな素敵な仕事に携わっていて飽きるはずがありません。まだ見ぬ次回の完成にたどり着くべく、日々ワクワクしながら縫いを進めています。