革を切ったり縫ったり磨いたり…様々な工程をたどり、ひとつのバッグが完成します。基本的にはどれも大好きな作業なのですが、その中で唯一、心苦しく思うことがあります。
仕入れた大きな革から製品となるパーツを切り出すとき、部位による性質の違いを考慮しながら、どの部分を使うかなどを慎重に決めてゆきます。加えて、生前についたキズ、シミ、肌荒れなども避(よ)けなければなりません。これは製品の見栄えを左右するとても大切な作業ではあるのですが、シビアに進めてゆくほどに避けた部分(=廃棄する部分)がどんどん増えてしまいます。丁寧になめされ、品質としては申し分ないのにキズやシミがあるという理由で避けられ、廃棄される革。私が心苦しく感じるのは、まさにこの部分でした。
そこで、ひとつ新たな試みを始めようと思います。
今回新色として追加したキャメルについて、キズやシミなどの部分も製品の一部として積極的に使用してゆこうというものです。キャメルは黒などの色の濃い革と違い、もともとの皮の表情を染色で目立たなくすることができません。それならば、キズやシミなども含め、革一枚まるごとをこの牛の個性として製品にしてみよう、という考えに至りました。
毎回、革の表情が異なる仕上がりになるため、従来の受注制作の製品とは別ラインで、一点物として制作したものを販売いたします。
バッグにあるキズやシミを汚れと感じるのか、この牛の生きてきた証と見るのか、そこにあるのは、ほんの僅かな目線の違いだけだと思うのです。
ぜひ一度、ご覧になっていただけると嬉しいです。
商品ページ
“holly (avoid note ver.)”
https://da61.thebase.in/items/58944131