forest flower

 

これまで、D.A.61 leather works では、「avoid note」と称して、工房での革の廃棄をできるだけ少なくする取り組みを行ってきました。キズやシミをそのまま生かした製品や、革の端の部分を使用してつくった製品などです。
そして今回、バッグなどの制作の際にどうしても出てしまう小さな端材を使って、リングをつくりました。

 名前は “forest flower” といいます。サックスプレイヤーのチャールス・ロイドの名演で知られる曲のタイトルでもあります。リズムがクルクルと変化し、優しさや、力強さ、繊細さ、混沌などが次々に押し寄せてくるような曲です。この曲を聴いていると、さまざまな表情を見せる自然の森の中にいるような気持ちになります。
 森の中へ分け入って見つけた花、というイメージがしっくりきて、この “forest flower” という名前をもらうことにしました。

 このリングは制作の過程で革を磨く作業があります。磨けば磨くほど、不思議とほんものの植物のような質感になってゆきました。動物の革が姿を変え、植物のように見えてくるというのは面白い発見でした。

 そしてこの「動物の革でできた植物のようなもの」を自然の森の中に置いたらどう見えるのか、そんな興味が湧き、前回のコラムに書いた秩父の山中での撮影を決めたのでした。

 そこでは、原生林のさまざまな姿を目の当たりにしました。繁茂する草木や巨大な倒木。その朽ちかけた倒木には苔がむし、虫たちが生き生きと暮らしていました。また、動物の亡骸にも遭遇しました。まもなく他の動物たちの餌となり、骨もやがては土に還るのでしょう。動物と植物と、その生と死が渾然一体となって森という営みを連綿と続けていることをまざまざと感じました。
 「自然」という、揺るぎない大きなものの存在をこんなに近くに感じたのは初めてかもしれません。そんな衝撃的な1日でした。

 そして革も、自然からのいただきものであるということを改めて実感し、今まで以上に大切に丁寧に、そして廃棄を少なくしながら制作してゆきたいと思うようになりました。

 この小さなリング “forest flower” は私に、とても大きな体験をもたらしてくれました。
“森の中へ分け入って見つけた花” のように、私もあの森で大切なものを見つけたと思っています。

商品ページ
“forest flower”
https://da61.thebase.in/items/86999210

“forest flower (gold leaf ver.)”
https://da61.thebase.in/items/87009015

“forest flower (silver leaf ver.)”
https://da61.thebase.in/items/87041099