先日、品川にある東京食肉市場へ行ってきました。芝浦屠場と言った方がわかりやすいでしょうか。全国から牛や豚が運ばれてきて、お肉になるところです。
革は、このような屠場で生み出されるお肉の副産物である牛や豚の皮が原料です。私も革を扱う者としては、その場所へおもむき、見て、感じるべきことがあると思ったわけです。
ほんとうは、実際の様子を見学できればと思っていたのですが、ここでは行っていませんでした。代わりに、同じ敷地内のビルの一室にある「お肉の情報館」という展示施設で映像と資料を公開しているということでしたので、そちらへ伺うことにしました。
展示は、屠場の歴史に始まり、食の安全、流通、屠畜の流れの図解、動物福祉、革について、差別問題と続きました。実際の屠畜の映像資料などは見当たらず、受付の方に訊ねると、私の真後ろを指差し、そこに置かれたノートパソコンの中だと教えてくれました。何の案内表示もなく、閉じられたままのパソコンがポツンと一台、置いてありました。この映像については、様々な意見があるのだと思います。ひっそりと、そしてしっかり目の行き届く場所に置かれているという印象でした。
内容は小学生にも理解できるようなストーリー仕立てになっていましたが、そこに映し出される映像は、ショッキングな部分もありました。いくつかの場面が瞼に強く焼きついています。一生忘れることはないと思います。
私がここで見て、感じたことを説明しようとすると、どうしても言葉に詰まってしまいます。「命とは」という言葉にできない、答えの出せない根源的な問いを突きつけられたように感じました。
私にできることは、これまで通り、丁寧に、大切に、そして、おこがましくも付け加えるなら、この命に対する問いをしっかりと携えて、制作を続けてゆくことだと思っています。
余談ですがもうひとつ、「いただきます」という言葉に、これまでよりも気持ちが込められるようになりました。