音楽と革と

D.A.61 leather works の製品は一見スタンダードなデザインに見えるものでも、よく見ると、少し特徴のあるつくりをしていたりします。バッグの構造だったり、シルエットだったり…。それは、私オリジナルのアイディアが、どこかしらに盛り込まれた製品をつくりたい、ひいては、私にしかつくれない、ここにしかない製品でありたいと思っているからです。
このような思いに至るきっかけは、かつて私が結成し活動していたバンドにあったように感じています。

そのバンドはサックス、ベース、ドラムの3人編成で、曲も主に私が書き、今まで誰もやったことがない、我々にしかできない音楽を目指していました。
どこかで聴いたことがあるような音楽なんてやるもんか、という、今思えば極端で無謀な挑戦でしたが、その音楽に対する真っ直ぐな姿勢は、好感を持って観てもらえていたように思います。
言わずもがな、ないものを生み出すというのはとても困難な道です。情熱だけで突っ走り、演奏も曲づくりもどこか空回りしていたように思います。
やがて、自分の力量やバンド運営などで限界を感じ、数年でその活動を終えてしまいました。

その後、レザークラフトに出会い、私のものづくりは、音楽だけでなく革製品にも広がってゆきました。
それでも、つくりたいと思うものが変わることはありませんでした。
音楽でも、革であっても、目指すところは「私にしかできないもの」でした。
ただ今回は、バンドでの経験が生きているのか、一歩引いて「私オリジナルのアイディアがどこかに盛り込まれているもの」を模索するようになりました。

今後も、こうして制作を重ねることで自分自身を研ぎ澄ましてゆき、いつか、「私にしかできないもの」にたどり着きたいと思っています。
後々振り返ってみたとき、また無謀なことを…と思うかもしれませんが。